奈緒美のイタリア便り

No132
(2020年3月)

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Ciao a tutti!
皆さま、お元気でお過ごしでしょうか?
まさかこの1ヶ月の間にこれだけイタリアの生活環境が、また世界中の状況が変わっているとは想像もしておりませんでした。
今や中国を追い越し世界一感染者数の多い国となったイタリア。
ご心配頂いた方々に心からお礼申し上げます。
 この便りを書くにあたり、もっと春らしい明るい話題を選びたいと思っておりました。
しかし、今の現状を前にこのイタリアで暮らす者として、やはり書かなければならないのでは無いかと思い改め、あえて新型コロナウィルスの話をさせて頂くことにしました。
今、日本は徐々に感染者の数が増えており、小池知事や安倍首相の緊急会見からその危機感の高まりを感じつつあります。
イタリアも約1ヶ月前までは、新型コロナウィルスは地球の反対側での出来事でした。
逆に、イタリアに住む全日本人が、クルーズ船が停泊していた祖国や家族の事を心配していたはずです。ところが、あっという間に状況は一変し、逆に心配される立場となりました。
まずは一人の感染者から一気に広がった北イタリアの小さな町を中心に、レッドゾーンと指定され封鎖。
その数日後にはイタリア全国土が保護地区とされ  学校閉鎖に映画館・劇場閉館から始まり、徐々に厳しさを増して外出規制が始まりました。今では生活必需品や食料品店、薬局以外は 全て閉まっています。 許可されていた犬の散歩も自宅から200m以内に限られ、買い物も自己外出許可申請フォームに記入の上単独で、しかも市境を超えていけません。
 
我が家も3月10日から軟禁生活を送っていて、週に1〜2回買い物に行ってくれている主人以外、私も子供達も自宅敷地内から出ておりません。
学校は、インターネットのシステムを利用しオンライン授業や課題提出での対応となっています。何しろすべての立場の人にとって初めての経験なので、何もかもが手探り状態です。私のウォーキングも勿論、子供達のサッカー練習も一切中止。それでも、自分が感染源になる不安がないだけほっとしています。 
スーパーは入場人数制限をしており、入り口に並ぶ場合は1m以上の間隔をあけて並んでいます。
幸い主人が買い物に出向いた際は大した列もなく、せいぜい4・5分待てば中に入れた様子ですが、恐らく人口の密集した街の中心地などは、長い待ち時間を要するのかもしれません。
 そんな状況で3月末を迎えていますが、毎日の感染者数や死者の数を聞くと唖然とします。 学校休校や外出規制は4月3日までとなっていますが、延長は間違いありません。
 ”不安や恐怖からは不安や恐怖しか呼び寄こさない、
だからポジティブに過ごしましょう!”
その考えは今も変わりません。
でも、過信は禁物と言わざるを得ないのも事実です。 
東京なら、日本なら必ず大事態にならずに乗り切れると確信しています。
その信頼は、IOCバッハ会長の言葉からも伺う事ができました。日本人してもとても誇らしい事です。 でも、その為には日本人と、日本に暮らす外国人一人一人、全ての方々の意識・自覚と覚悟が必要です。
 イタリアの医療事情は、確かに日本より問題を抱えていると思います。
ですが、医師の技術や能力のレベルの高さは他国からも認識されています。
そして、とかく悪く紹介されがちな事も多いイタリアではありますが、他のヨーロッパ内の国に住む友人達と連絡を取りながら感じたのは、例えば他の国(日本も同様)で問題になる様な目を見張る様な買い占めや パニックでお店に殺到する様な光景は少なくとも私の周りでは起きていないのです。逆に、この様な状況の中でも皮肉を交えたジョークで笑いを誘うメッセージや動画がSNS上で回って来たり、フラッシュモブで一斉にテラスや窓越しからイタリア国家を演奏したり歌ったり、励まし合って明るく乗り越えようとしている
姿勢に、イタリア在住日本人の友人達の間でも、改めてイタリアという国を好きになったという声が上がっている程なのです。
”Io resto a casa”私は家に残ります、”Andra tutto bene”きっと全てうまくいくは今やイタリアでの合言葉となっています。
 中には政府の対応や、バチカンのローマ教皇に対してまでも批判の声を上げる人もいます。実際私は一番苦しい地区に生活しているわけではありませんし、あくまでもこれは私の住む地区で私自身が体験している事と前置きをしての話ですが、私の周りでは今のこの状況のお陰で、普段何気なく行っている行動の一つ一つのありがたみに気付き、与えられているものに感謝する気付きとなったという声を多く聞きます。
"神が罰や裁きで今の状況を私達に与えられたわけでは決してありません。今こそ物事の真の価値に気付き、人と人とのつながりを尊く思う時なのです。"と言う内容のメッセージも回って来ました。今、多くのイタリア人にとって、全てが去った後の再会でキスや抱き合っての"いつもの挨拶"が出来る事が待ち遠しいに違いありません。
 毎日、医療現場でリスクと隣り合わせで患者さんの治療にあたって下さっている方々、ワクチンや治療薬の開発に全力を尽くして下さっている方々など、すべての方々に敬意と感謝を忘れません。
残念ながら、感染により死亡した医療関係者や、死に立ち合った聖職者も感染して命を落とされた方が少なくありません。 これは今はイタリアで起きている事ですが、日本でも今すぐ深刻に向き合わなければならない現実だと思います。
一人でも多くの方々が救われます様、一日も早く終息の日を迎える事ができます様心からお祈り致します。
そして、私自身も今出来る事、それは解除されるまでは自宅に篭り、元気に軟禁生活を送ります!
外部と隔離されても、インターネットを通して誰とでも繋がっていられる時代、ありがたく幸せな事だと
実感しています。
どうぞ皆さま、充分予防をしつつ慎重に行動なさって下さい。
経済的な不安は世界中同じです。我が家も主人が失業状態になり既に2ヶ月以上です。ですが、IPS細胞の山中教授が仰った、"桜は来年また必ず咲いてくれますが、失われてしまった命は戻りません"と言う言葉がとても心に響きました。
 自分が感染源になって、気付かないうちにご高齢者や疾患をお持ちの方々に移してしまったり、感染をどんどん広げてしまう事が何より怖い事です。
そして、免疫力を高めるべく良い睡眠とバランスのある食事、こんな状況でも沢山笑って明るく過ごしましょう。次回はきっと明るいニュースのお便りができます様に。
皆さま何卒ご自愛くださいませ。
 
Ciao alla prossima!
イタリア・アッシジから奈緒美でした。